『好奇心は女子高生を殺す』 - セルフ夏休みの感想文

なつやすみのかんそうぶん かいたひと リラ/dettalant

 

きょう、ぼくは、『好奇心は女子高生を殺す』をよみました。

すこしふしぎで、ゆりゆりしくて、おもしろかったです。まる。


ついしん:これでおわりじゃあないです。下に長くつづきます。まる。

好奇心は女子高生を殺す?

『好奇心は女子高生を殺す』は、小学館が運営する「サンデーうぇぶり」にてWeb連載中の作品。(記事執筆時現在)

つい先月に単行本一巻が発売されたばかりの、フレッシュなやつだ。

 

単行本一巻の帯コメントを引用すると、こんな感じ。

「世界一好奇心旺盛なのは女子高生なんだよ。」

 

土星人、幽霊、死神、サンタにヒーロー、ゼリー人間!? 日常はいつも、“すこしふしぎ”で溢れてる……

ノーテンキなみかんとクールなあかね子の2人が送る、 宇宙規模の放課後をご覧あれ♪

一見どういう作品なのかよくわからない説明に見えるかもしれない。が、これが意外と作品をよく表している。

なぜなら、「どういう作品なのかよくわからない」ことこそが、この作品の特徴であるからだ。

 

ある時は無人島で過ごし(第1話)、またある時は土星に辿り着き(第2話)、生きながらにしてあの世を訪ねることも(第10話)。

そんな突拍子もないめちゃくちゃさを持ち合わせながらも、ある種の一貫性を保つことに成功しているこの作品。

 

それはひとえに、「定番要素と非定番要素の両立」によるものと感じてならない。

"すこしふしぎ"なお話

この作品はまさに、「SF」の典型例だ。

 

SF(サイエンス・フィクション)じゃなくて、SF(すとりーとふぁいたー)でもなくて、「SF(すこしふしぎ)」なSF。

かの藤子・F・不二雄せんせーが提唱した、人を食ったような特徴を持つジャンルに、この作品は参じている。

 

平穏な日常と突拍子もない非日常が、すぐ隣で横並びとなっているように。常識ってやつをあやふやにしてしまう、マンガが生み出した空想性の極地の一つ。

この作品においても、そうした部分はいかんなく発揮されている。

 

次の話で何が起きるかは、その時になってからのお楽しみ。

毎話毎話はフレキシブルに変化し、ページをめくるたびに新鮮な展開が待っている。

 

僕もご多分にもれず、そうした「すこしふしぎ」が好きなタイプでね。突然の土星旅行も、唐突なる時間旅行も大好物。

そんなタイプの読者はもれなく、この作品の半分を楽しむ切符を入手済みなのだ。

 

そうした目線で言えば……。

  • 第2話 環状線から輪っかの星に
  • 第3話 雷王星からの方程式
  • 第4話 居残りは甘さ控えめで…

この三つの話などが良い。

 

僕がとくに好きなのは第4話。

放課後の学校を闊歩する、全身ゼリーのゼリー人間。じつに「すこしふしぎ」な生物だと思わない?

じょじょに近づく二人の関係

さっき僕は、「すこしふしぎが好きなら、この作品の半分を楽しめる〜〜」と書いた。

すこしふしぎ要素が半分を占めるなら、もう半分の要素はいったいなんなのか?

 

それは、それはね……。

 

百合だ! おにゃのことおにゃのこ同士の魅惑なるアレだ!

「好奇心は女子高生を殺す」の半分はすこしふしぎ成分で出来ていて、もう半分は百合成分で出来ている。

 

と、言い切ってしまうと百合好きの妄言に聞こえるかもしれない。

けれど、百合要素が重要なファクターを占めているのはマジ。本気と書いてマジ。

 

そもそもお話の始まりが「みかん」と「あかね子」の出会いであるし。(第1話)

お互いを助けようと大胆な行動をすることもしばしば。(第1話、第5話ほか)

 

その上で、第1話より第2話。第2話より第3話。

話を追うごとに「二人の関係性」は密度の濃いものとなっていき、無二の絆に変わっていく様子を見せつけられる。

 

これは百合好き界隈の用語だと、「友情百合」と言われる傾向に入るだろう。

恋愛方向に寄りすぎず、ただの友人関係にも寄りすぎず。

 

「妙に仲が良い」関係性を維持しながら、みかんとあかね子の物語は進んでいく。

それは……良い。

 

百合的な輝きが強いのは、このあたりの回。

  • 第5話 君への想いは週末模様
  • 第9話 みっふの恩返し
  • 第11話 ミライ・リトライ

 

僕が特に好きなのは、一巻のトリを飾る第11話だ。

(ネタバレなので自主規制)な百合部分もそうだけど、最後の最後に出てくる、あかね子のセリフがたまらない。

 

一巻を通してあかね子が取り続けてきたスタンスを、色濃く表すセンテンス。

どこまでも「あかね子らしい」セリフであり、ひときわ大きな余韻を残す美しさがそこにある。

 

友情百合がお好きなら、読んで損はないよ。いやホント。

貫かれる「二人の物語」

作品の半分は「すこしふしぎ」要素で、もう半分は百合要素。

ストーリーだけがあっても、絵だけがあっても「漫画」とは言えないように、両輪は二つ揃ってはじめて意味がある。

 

先に述べたように、「すこしふしぎ」というのは本質として非定番をつくもの。

(百合好きとしての勘違いかもしれないが)百合要素というのは、昨今では定番となりつつある部分。

 

二つが合わさることは、まさに「定番要素と非定番要素の両立」と言えるだろう。

「好奇心は女子高生を殺す」という物語は、その両輪が揃ってはじめて成り立つ構成がなされているのだ。

 

本質的に「すこしふしぎ」作品は、長期的なストーリーが形成されにくい弱点を持っている。

毎回毎回別のことを引き起こして、突拍子もないことをしでかし続ける。

だからこそ、「海賊王に俺はなる!」といった「長期的に結ばれるストーリー」を語りにくい構造であるからだ。

 

しかし、この「好奇心は女子高生を殺す」においては、「みかんとあかね子の関係性」こそが、その長期的ストーリーの架け橋となっている。

 

すでに読んだ人は思い返してみて欲しい。

二人の距離感は、徐々に徐々に変容を遂げているだろう?

 

それを(ネタバレ配慮済み表現で)まとめたものがこれだ。

話数 簡単な説明
第1話 入学式の日にはじめて出会う
第2話〜第4話 常識はずれの事件を共にくぐり抜ける
第5話 あかね子の心情に動きあり
第7話〜第8話 「二人の思い出」が増えていく
第9話 過去と現在の再確認
第10話 第5話のセリフ・内容と比べてみてね
第11話 一巻の集大成たる話

 

この一巻を貫いているのは「あかね子の物語」にほかならないだろう。

正確に言えば、1話、5~11話にかけてあかね子の物語が構成されている。

 

個々の「すこしふしぎ」な話の中で、「あかね子のみかんへの気持ち」がグラデーションのように変化していく!

しかし、微細な心情の変化は個々の話では目立たず、一本繋がったストーリーの中ではじめて結実する!

 

これは百合だ! 控えめなうちにきらめく「すごい百合」だ!

 

各話ストーリーと長期的ストーリーがハーモニーを響かせる、驚くばかりの物語。

実に堪能させていただきました。まる。

 


 

……といったあたりで、この感想文は終わり。

(2017/08/12現在) 作品ページで1〜3話試し読みができるから、興味を持たれた方は是非読んでみてね!