インディークリエイターもすなるゲームジャムといふものを、僕もしてみむとてするなり。
というわけで、二週間でボイスロイド系二次創作ゲームを作るゲームジャム、VOICEゲームジャム6に、ミニミニおねおねパズパズルという作品で参加してみました。
以前作ったゲームが人生初の(完成させられた)ゲーム製作であったので、これが人生二度目のゲーム製作ということになりますかね。
この記事はゲームジャム参加のためにGodotを用いて行ったゲーム製作についての、備忘録を兼ねた感想記事となっております。
Godotを選んだ理由
まずGodotをゲームエンジンとして選択した理由について。
- Linuxで使えること(使用環境的にこれが一番重要)
- Win/Mac/Linux向けにクロスコンパイルできること
- 2Dゲームを作りやすい機能や環境が整っていること
- 無料で使えるゲームエンジンならなおよし
これらの理由を主な選択基準として、この二つに絞り込みました。
- Godot
- Defold
この両者は使い勝手も良さそうで僕のニーズにもあっている、甲乙つけがたい出来のゲームエンジン二つ。
ただ、Defoldくんではおま環な問題が発生しまして。
何かと言うと、僕が今現在使っているopenSUSE Leap 15.2では、GLIBCのバージョンが2.26
だったんですけれど。
Defoldくんは2.27
を要求していたんですね。
動かすためにGLIBCをバージョンアップするのもDefold用に別で準備するのも面倒くさかったので、消去法でGodotくんを採用した経緯があります。
ゲームのコンセプト
製作を始めた段階での構想はこういったものでした。
- 空どうふさんのめちゃんこ可愛い立ち絵を使いたい
- 作りやすさを考えて2Dゲーにする
- 急かされずにじっくりと考えて進むゲームが作りたい
- 濡れた約束のように、いらすとや素材をふんだんに組み合わせたゲームにしたい
- ボイロキャラの会話がメインコンテンツの会話劇ゲー? でもゲームらしい要素も入れたい(おぼろげな認識)
それからどういうゲームを作るか考えつつ、数日間こういうことを作ってました。
- ツクール作品タイトル画面を模したレイアウトの仮タイトル画面
- 会話ダイアログ画面
- 立ち絵をぴょんこぴょんこさせて遊べる仮2Dアクション画面
そうこうしているうちに「このままでは期間内に間に合わないな」と気づいたので、とにかく作りやすさを求めた形に方針転換。
以下のようなコンセプトを練り上げました。
- 空どうふさんの立ち絵を十全に活かすため2D横スク操作
- じっくり考えて進むパズルゲー
- ストーリー要素は完全オミット。パズルゲーに主眼を置く
- 立ち絵以外の画像素材はいらすとや一本を目指す
- パズル面は最低5面はなんとか作りたい
- 完成最優先。作るのに時間のかかる要素(演出・イベントなど)はざくざくとオミットしていく
実際にできあがった今から振り返ると、概ねコンセプト通りになったのではないかと考えています。
はー、間に合ってよかった……。
意識して目指した部分
- 理不尽ではないパズル・レベルデザイン
- チュートリアルを兼ねた序盤構成
- 複雑なアクションテクニックは要求されない
とにかく「理不尽なパズルにはしない。無難であっても安定を取る」ことを目指していました。
多様なゲームジャンルの中でも、パズルゲーはともすれば理不尽となりやすいものなので……。
理不尽さ軽減とチュートリアルの充実
先程も書きましたが、パズルゲーは理不尽さ軽減との戦い。
良いパズルは「どうやればこの問題が解けるだろうか」と頭を悩ませるものであって、「これってそもそも何がどうなるの?」と惑わせるものではないと考えています。

そのため、スイッチから装飾コードを伸ばしてみたり。


箱に乗ってジャンプしないと到達できない高さにして、「箱を押して足場にする」操作を理解しないと先に進めないようにしたり。

スイッチのチュートリアルでも同じことをやったりしました。
これを全編徹底したかったところですが、製作期間と発想力の不足もあり、この辺りは上手くいきませんでした。
- タイトル画面での「方向キーで移動、zキーで決定」の説明不足(ゲーム慣れへの甘え)
- 「箱でレーザーが遮れる」チュートリアル画像の提示不足(入れ忘れ)
- 「しゃがむとズームアウトして周囲が見渡せる」機能のチュートリアル不足
- スイッチからスイッチにつながった場合NOTゲート動作をすることのチュートリアル不足
ざんねん。
複雑なアクションテクニックは要求されない
- ギリジャンアクション
- タイミングを問われるアクション
- 時間制限アクション
こういった動作を求められるアクションパズルも良いものですが、じっくり考えることが出来るパズルゲーも良いもの。
本作は「2Dアクション操作のじっくり系パズル」を目指していたので、アクションパズル的な精密操作は求められない方向を意図しました。
ただ、5面はパズル難易度を高めるために仕掛けを詰め込んだせいで、ジャンプアクションが若干シビアな調整に行き着いてしまいました。
ここも残念ポイント。
さくっと入れれそうなのでねじ込んだ部分
- シームレスなBGM切り替え
- ニキシー管による面数表示
- レベルクリア演出
- ゲームオーバー演出
- エンディングマップでの後語り会話
- エンディングマップでの背景キャラ二体: 走り回ってるのとプレイヤーの方向を見るの
シームレスなBGM切り替え
昨今の最新ゲームにおいては、インタラクティブな音楽演出がトレンド。
僕個人としてはそこまで音楽を重要視しているほうではないのですが。
「他部分を犠牲にせず取り入れられるなら、取り入れるにこしたことはない」とも考えているほうです。
他方で、古めのフリゲ好きの人だとおなじみの素材屋さんであろう氷石さんが、
「曲の尺を合わせてあり、再生場所を合わせて切り替えればシームレスにつながるアレンジ素材」を最近出されてたんですよね。
cave01a "In To Darkness"(オーディオver.)
— 氷石 彩亜@一息中 (@hyouseki) September 4, 2020
オーディオ化にあたり、後半部分にパッドを加えてみました。
次はインタラクティブMIXの方に取り掛かるかね。 pic.twitter.com/H0jetOQJes
cave01int_a 「In To Darkness(Interactive mix)」
— 氷石 彩亜@一息中 (@hyouseki) September 7, 2020
こんな感じでどうでしょ。
…さて、ファイルを何処かにアップしたいが…Dropboxでも覗いてみるかね。 pic.twitter.com/XqufLiNvqN
ツクールだとどうなのかは浅学にして知りませんが、少なくともGodotだと「現在再生箇所を取得して、その箇所から別曲を再生する」のは超簡単。
むしろ、ツクールでのデフォルト動作のように自然なループをさせるほうが面倒くさいまである。
というわけで、本作にもさくっと取り入れてみました。
- 面選択フィールド:
cave09int_a.ogg
- パズルフィールド:
cave09_a.ogg
パズル面に出入りするたびに、これらの曲が切り替わります。
欲を言えば「曲切り替え時のフェードイン・アウト演出」が欲しい所でしたが、それはちと手間がかかる処理の気配がしたので、ボイゲジャム期間中に実装は断念。
後日アップデートを行うことにしました。
ニキシー管による面数表示

いらすとやでよく見られる「この素材なんであるの……?」素材の一つなニキシー管時計。
他コンテンツを作る場合は使いどころがよくわからない素材かもしれませんが、ことゲームの上では雰囲気の良いインテリアとして最適!
使うグラフィック素材を求めていらすとやを巡っていた際に見つけて、即座にゲームに投入することを決めました。
存在理由はともかく、ちょっとおしゃれになったからヨシ!
レベルクリア演出
はい。クソデカレベルアップくんオマージュです。
パズルゲームの仕様上「面クリア時には、クリアしたことを示す演出」が求められるわけですが、真面目な演出が思いつかなかったので、パロネタでお茶を濁した形になりますね。
- 元ネタを知ってる人からすると愉快に感じる
- 知らなくても「安っぽい演出」程度で流してもらえる
- とにかくすぐ作れる
この条件で考えた時に、クソデカレベルアップくんをぱっと思いついたので実装しました。
ゲームオーバー演出

これもパロネタです。
元ネタはご存知、「I wanna be the guyのゲームオーバー演出」ですね。
これもレベルクリア演出と同じで、「すぐに作れそうだった」ことが第一選択理由です。
エンディングマップでの後語り会話
パズルを5面分解いてすぐ終わりでは余韻というか、「終わった感」があんまり出せないかなあと思って追加しました。
クリア後に製作意図や裏話を聞ける小部屋が作ってあるゲーム、個人的に好きなんですよね。

きりたんを立たせて、キー操作に応じて会話を行わせる機能はわりとすぐ実装できたのですが。
実は「会話が始まるとカメラがひゅっと動き、会話が終わるとカメラが戻る」部分に、かなりの手間をかけさせられました。
一度だけのイベントにしては時間かけすぎた気もするが、小気味良いカメラ移動になったのでまあヨシ!
エンディングマップでの背景キャラ二体
ほかに、エンディングマップではウナぴが走り回ってたり、IAさんが座ってたりします。
いわゆる賑やかし担当。
- ウナぴ: エンディングマップの決められたルートをひたすら往復し続ける
- IAさん: プレイヤーキャラが左側に来ると左を向いて、右側に来ると右を向く
「パッと入れたくなったから入れた」程度のもので、深い意味はありません。
ボイゲジャムに参加してみての所感
この記事をだらだら書いている間に「VOICEゲームジャム6への参加後の雑感」と、同じくボイゲジャム6参加者の人の記事を読みました。
そうすると僕も感想を書きたくなったので、ここからはボイゲジャムに対する所感を。
ぶっちゃけた話、僕は以下のような部分があったからこそ、ボイゲジャムに参加する気になった部分があります。
- ゲーム制作は元々したかったので、「何かしらのゲームを作る理由」が欲しかった
- ボイロ系は大好物ジャンルなので、即戦力として使える可愛い立ち絵をいくつも知っていた
- 「ボイゲジャム作品を全部遊んでみる」タイプの人を見かけたことがあるので、少なくとも数人には確実に遊んでもらえそうなことが期待できていた
このうちの三つ目、「数人には確実に遊んでもらえることが期待できた」ことが大きい。
ゲーム制作は楽しいものですが、「誰一人とすら見向きもされない作品になるかもしれない」という恐怖と戦うのが本当に大変なもの。
特に、僕はこの恐怖に負けやすい部分があると自負している人でして。
「ゲームは作ってみたいけれど、作ってどうなるのか」と二の足を踏んでいた部分があるんですよね。
しかし、数人であっても、ただ一人であっても、「確実に遊んでもらえる相手がいる」なら話は変わってきます。
確実に遊んでもらえるのなら、後は面白く思ってもらえるゲームを自分が作れるか否か。
「自分としてできる限り完成度を高められればヨシ」と自己完結した状態ほど心強い状態はありません。
作ろうと思った作品を完成させることができたこと。
これこそが、僕がこのボイゲジャム6で得た最大の価値だと考えています。
他の参加者さんの作品を見て思ったこと
とにもかくにも、自作絵作品の比率が大きい。
約半数が自作絵搭載というのはなんともすごいことですねえ。
僕は普段、ボイロ実況Cevio実況を好んで見ているのですが、それらにおいての自作立ち絵率というのはそこまで高くありません。
いやまあ、他ジャンルと比べると高いとは思いますが。
その部分と比較した時、この自作絵率の高さは「ボイロを題材にゲームを作ろうと志す人」特殊性が伺えるようで面白いものがありました。
ちなみに、ボイゲジャム6参加作品の中で、個人的に一番気に入ったゲームはゆかりさんのホームラントライアル!です。
もうそれはそれは可愛いゆかマキに、原典の方向性をしっかり継承したゲーム性。
そしてシビアな難易度調整と来れば、熱中しないわけがない。すき。
ボイロの中での宗派の違いについて
最後に、さきほどの記事を読んでふと思ったことを。
ボイロというジャンルの中でも派閥はいろいろとあり、「誰を推しとしているか」によって空気感変わってくる部分がある気がします。
こう、なんとも言語化しにくいのですが。
ゆかマキ推しの人にはゆかマキ推し同士で共通する気配があって。
ウナきり推しの人でもウナきり推し同士で共通する気配があるというか。
- キャラ・カプ固有の因子
- 見る側が元来持ち合わせる因子
これらの相性によって、自然と推しキャラや推しカプが定まってくるのかもしれませんね。
上記記事を書かれた人は、どちらかというと「ずん子さん単体推し」の人っぽい気配がするなーと思いました。
例えば、「あわよくば自己作宣伝という思惑を持ちつつ、ずん子門徒の一員となる」部分。
これはずん子公式が繰り返し強調し、また推奨している、
「東北活性化のために東北ずん子を上手く使ってね! どんどん使ってね!」という姿勢と類似するものがあります。
成し遂げたい理想と現実的な実利を、バランスよく表出させていること。
これはずん子公式の特徴とも言える部分で、他のボイロ公式にはあまり無い部分なんですよね。
名前 | 特徴 |
---|---|
ウナ公式 | 「ウナを応援してくれてありがとう!」とファンと一緒になって喜ぶアーティスト気質 |
ついなちゃん公式 | ボイロ界隈屈指のフレンドリーさ。ファンとの距離が超密接 |
ヒメミコ公式 | シニカルなメタネタと悪ノリの塊 |
ARIA姉妹公式 | 独自の世界観を持っててそこから出てこないタイプのアーティスト気質 |
これらはあくまで、僕個人が勝手に抱いているイメージに過ぎませんが。
公式が持っているキャラクター性に惹かれ、あるいは影響されて。
それらのキャラクターを好むファン層も「公式が持ってるキャラクター性に似ていく」面は大いにありえると思っています。
少なくとも「公式とファンは距離を置いているべきものだ。二次創作の風潮に公式が影響されるなんてもってのほかだ」というタイプの人が、
ヒメミコやついなちゃんあたりを推す可能性は低いでしょうし……閑話休題。
そんなわけで「自分としての実利を得る目的も含めて二次創作を行うと決めた」人が、
「あなたの実利のためにずん子をどんどん使ってね! それがずん子としての実利になるんです!」と強調するずん子さんの門を叩いたこと。
この構図、お互いが向いている方向が合致してて面白くない?
という雑感でした。